第10回 日本物理学会 若手奨励賞 (実験核物理領域) の発表
日本物理学会実験核物理領域 第10回若手奨励賞受賞者について
ご報告致します。
核物理委員会のもとに設置された選考委員会で審議の上推薦し、
10月10日開催の日本物理学会理事会において、
野地俊平氏(大阪大学核物理研究センター) の受賞が承認されました。
受賞対象は
「荷電交換反応遷移強度の詳細測定による、超新星前駆現象にかかわる電子捕獲確率の導出」
です。
おめでとうございます。
野地氏には、来年3月に東北学院大学で開催される第71回年次大会において
若手奨励賞受賞記念講演を行っていただきます。
選考委員長 野呂哲夫
以下は、対象論文と受賞理由です。
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野地俊平氏(大阪大学核物理研究センター)
S. Noji, et al., "b+ Gamow-Teller transition strengths from 46Ti and
stellar electron-capture rates", Phys. Rev. Let. 112, 252501 (2014).
S. Noji, et al., "Gamow-Teller transitions to 45Ca via the 45Sc(t, 3He + γ)
reaction at 115 MeV/u and its application to stellar-electron capture
rates", Phys. Rev. C 92, 024312 (2015).
受賞対象の研究は、不安定原子核である三重陽子ビームを用いての(t,3He)反応
によるガモフテラー遷移強度の測定である。3He粒子とγ線の同時測定により
残留核低励起状態への弱い遷移強度の低バックグラウンド測定を実現した。
弱い遷移であるにもかかわらず、これらの遷移強度は星の進化を決定づける
物理量である電子捕獲確率と密接に関連している。論文では現在の理論計算が
電子捕獲確率を大幅に過大評価している可能性を指摘している。46Scを標的
とした速報が第1論文、45Caを標的とした詳報が第2論文であり、超新星
前駆現象の研究に一石を投じる、極めて学術的価値の高い成果である。
野地俊平氏は実験遂行、データの分析および科学的結論の導出の全ての段階で
中核的な役割を果たしており、その貢献は若手奨励賞にふさわしいものである。
また、博士取得後に他研究所での実験遂行に重要な役割を果し、短期間で
価値ある成果を得ていることからも、将来性のある優秀な若手研究者であると
評価できる。